LOLにおけるコーチングとティーチングの違いって何?コーチが理解しないといけないこと

仕方ないことだとは思うのですが、LOLのコーチをしたいという人や他のLOLのコーチをしているのを見ると、ちょっと勘違いしている人が多いなと感じます。彼らのしていることは「コーチング」ではなくて「ティーチング」です。

今回は「ティーチング」と「コーチングの違い」を書いていくと同時に、コーチは一体何をしないといけないのかを、LOLのコーチをしていた目線多めで書いていこうと思います。

ティーチングとコーチングの違い

僕の好きな例え話があります。「あなたは釣りに来ました。目の前にお腹が空いた人がいます。どうしますか?」というものです。あなたはどうしますか?1.助ける、2.釣ってあげる、3.釣り方を教えてあげる。さて、どうしますか?

◆指導者失格な人

当たり前ですが「助けない」という選択肢を取った人は、指導者に向いてないでしょう。基本的に、ある程度は指導者もリターンを求めるものですが、それは育ってから先のお楽しみなので、ここで助けないを選ぶ人は指導者失格です。

ただ、もう1つ指導者失格の選択肢があって、それは「釣ってあげる」です。この選択肢を取った人は指導者失格です。もしこの記事を最後まで読んでも「釣ってあげるのが正解だ!」と思う人は、自分のことだけ考えて生きていくべきでしょう。指導者失格なだけで、人間失格とは言ってませんからね。

◆ティーチングとは

「釣り方を教えてあげる」と言ったあなた。あなたは「ティーチャー」ではありますが「コーチ」ではありません。もちろんどちらも指導者ですし「ティーチャー」も必要な存在ではあると思っています。

ただ、これは僕の美学かもしれませんが「スポーツにティーチャーはいらない」と思っています。何故ならスポーツ、まぁこの場合はEスポーツでゲームでもなんでもいいんですけど、みんな好きでやってるんですよね。

個人的に「ティーチャーは嫌なことでも手っ取り早く身につけさせる人」で、コーチは「真に上達させる人」だと思っています。大学でも、勉強と研究の違いが判らず研究者になれずに辞めていく人は多いと聞きます。ちょっと似ているなと思っています。

◆コーチングとは

じゃあ「コーチング」とは何か?と言われれば、この例え話で言えば「魚を釣って生きていく術」を教えるのがコーチングであり、コーチの仕事だと思っています。この例え話でいえば「釣り方を教えてあげる」という答えでは、その場しのぎにしかならないでしょう。選択肢の中に答えがなかったのは、ちょっとずるかったですか?

LOLのコーチングとは?

先程の釣りの例え話と、LOLでの例え話を混ぜて話していこうと思います。

◆どうしたそうなったのか考えさせる

まず、釣りでの話ならコーチングとは「そもそもなんでお前お腹空いてるの?」ということから始めます。「どうしたら何か食べれると思う?」「どうしたらこういう飢えに困らないと思う?」ということを考えさせます。これを考えさせるのがコーチです。釣り方を教えるだけでは、根本の問題は解決しません。

LOLでなら「レーンいつも負けるよ」という人に対して「この相手にはこうしたらいいよ」とか「このチャンピオンはこうしたらいいよ」と言うのはティーチングです。コーチングとは「どうしたらレーン勝てるようになると思う?」「どうしていつも負けていると思う?」と考えさせることです。

◆究極のコーチングは見せること

僕がテニスのコーチ時代、1番偉いコーチに教えてもらって印象的だったのは「子供のレッスンで打ち方なんてのを説明する必要はない。口で言って説明しているのは、実は後ろで見ている保護者の人たちに『教えてますよ~』とアピールしているだけ。子供に教えるときは良い打ち方を見せてあげるだけでいい」というものでした。

釣りで言えば横に座って釣りをして、釣った魚をモグモグ食ってやればいいでしょう。そうすれば「あぁこうやったらお腹いっぱいになるのか!」と思うはずです。もしならなければ、そもそも釣りに一切興味ないんです。こんな人に教えようとするとお互い不幸になります。もちろん義務教育みたいに、嫌でも教えた方がいいこともあるんでしょうけどね。

LOLで言えば高レートが低レートの人に教えるなら、そのチャンピオンを使って上手いプレイを見せてあげればいいでしょう。僕のように低レートが高レートに教えるなら、プロの良いプレイをしたシーンを見せて「上手いやつはこれ」と、投げつけてやればいいんです。それだけで本当に上手くなるものですよ。

◆行動する癖をつけさせる

「行動させる」とは具体的に何かと言えば、例え話なら「釣り竿はどこで手に入るか、どうやって作るか」「どうやったら釣れるのか見て考える、どうしてもわからないなら上手い人に聞く」「自分で釣ってみる」といったようなことです。

LOLでいうなら「どういうチャンピオンが強いのか」「上手い人はどういう動きをしているのか動画で調べる。何がわからないか聞きに来る」「1日何戦する。毎日する」といったような行動を変えさせることです。

僕が昔テニスのスクールに通っていた頃も、コーチがしてくれたことは「こうやってこうやったら上手くなるよ~」ということではなく「走れ!強く打て!サボるな!テニスやめてーのか!そうそれだ!走れ!走れ走れ走れ走れ!打て打て打て打て打て!」ということしか思い出せません。

LOLのコーチングの基本

コーチングの基本を押さえておきましょう。

◆褒める

「褒める!」これだけは絶対に忘れてはいけません。ぶっちゃけ、これさえ出来てればコーチと言ってもいいです。「教える」というのは、どれだけ優しくアドバイスをしても結局「ここお前下手。なにやってる。それ無駄」というマイナスな言葉を投げつけているのです。

だから教えるには、まず褒めて相手に「こいつの言うこと聞いてると楽しいな」「こいつ私のことよく見ているな」という、プラスな気持ちにさせないといけません。もし思わせることができれば、多少きついことを言っても大丈夫になります。

◆肯定する・否定的にならない

「~してはだめ」とか「ここはだめ」とか、そういう風に教えてはだめです。もしあなたが教えられる側でこれをしたら「そんなことわかってるわ!」という場面が多いと思うんですよね。なので基本的には「ここはこうしよう」というように、肯定的な言い方をしましょう。

例えばレーニングでミスをしている場合なら「ここでこういうダメージトレードをしてはいけない」という風に言うのではなくて「このマッチアップはこういうことを考えるマッチアップだから、こういう風なことをすればこういったミスは無くなるよ」という風な感じです。

慣れてきたら「なんでこのマッチアップで負けてると思う?そもそもこのマッチアップはどういうマッチアップなの?勝てるマッチアップなの?どの時間でどうなったら理想的なの?」という風に、相手に答えさせるようにコーチングを行いましょう。

全てをコーチングするというのは難しく、どうしてもティーチングになる場面はあります。そういう時、否定的な言い回しにならないように気をつけましょう。

◆言語化する

これがコーチに1番大事な能力です。褒めるにしても、注意するにしても言語化が出来ていないと説得力がありません。例えばガンクを決めた時に「このガンク決めたのはレーナーがちゃんとダメージトレードしてたし、セットアップの仕方もよかったね」と言うのと「このガンクよかったね!すごい!レーンもジャングルも上手かった!」というのじゃ、全然違いますよね。

チャレンジャーでも言語化が出来ていない人はコーチングができませんし、説得力も「レートが高いから恐らく正しいんだろう」ということしかありません。一方、言語化がしっかりできている人なら、極論LOLを回してなくてもコーチングすることはできます。

極端な話「レートが高い=正しい」と思っている人に教えることは不可能です。だって思考が止まってますからね。ただ逆に話を聞いてくれる人が「こいつ何言ってるんだ?」と思われたら、それはもうおしまいです。言語化をしっかりして、説得力を身につけましょう。

◆考えさせる

あらゆることを考えさせてください。確かに「何か」ができていなかった時に、その「何か」を教えるのはとっても簡単で、すぐに効果は表れます。しかしそれでは「真の理解」を得ることはできませんし、そもそもの話ほとんどの人は「成長すること」が出来てないんです。

コーチとは「成長すること」を教えることです。なのでコーチも「どうやったら出来るだけ0から答えに辿り着けるかな」ということを、一生懸命考えてください。出来ていないところをすぐに教えようとするコーチは、自分自身の成長を止めています。

ただ実際0から全て分かる選手なんて、ほとんどいません(というかいたらコーチがいらない・・・)。なので「半分教える」を意識してください。相手が「ここがわからないんだけど」と言えば「わからない場所は考えた」で半分です。逆にコーチ側から「ここはどういうことだと思う?」という問いを出せば、わからない場所は考えてないけど「その答えは考えている」と言えます。

◆上手いプレイを見せる

先程も言いましたが「究極のコーチング」は、見せることです。見せて自分で「どうしてこんなことをしてるんだろう?」「どうしてこんなことができるんだろうか?」ということを考えさせることが1番です。

なのでレートが高いなら1vs1をしてあげればいいでしょう。僕のように低レートが高レートを教える場合は、良いプレイや見せたいシーンを一緒に見て「どうしてこうしたと思う?」「どうやったらこんなプレイできるんだろうね」「ここはどういう判断したらできるのかな」という風にしてもいいと思います。

◆対等に接する

1番みんなが勘違いしているところは、接し方だと思います。もちろんコーチは「教える側」ではあるのですが、だからといって教師と生徒のように上下関係が必要なわけではありません。分からないことはむしろ、プレイヤーから教えてもらうことも大事です。

プレイヤーは、コーチに言語化して教えることで考えがまとまりますし、言語化する方法をプレイヤーにコーチが教えることもできます。そうやってプレイヤー側から教えられたことで、コーチは違った面からしか得られない知識を手に入れることができます。「一緒に成長する」という意識を持てば、自然と教え子はきっと増えていきます。

LOLでティーチングをするとどうなるのか

「ティーチングも悪くないんじゃないの?」と思う人は結構います。実際ティーチングが必要な場面はいっぱいありますし、きついことを言えば「才能の無い人に程ティーチングは有用」と言えます。

ただ、これは僕がずっと教えてきた経験で言えばむしろ逆で「ティーチングが有用だと思っている人ほど才能がない」と思っています。「手っ取り早く上手くなりたい」「自分で努力したくない」「素直じゃない」こういう人は才能がないと感じますし、逆にどれだけどんくさくてもこれができる人は、上手くなっていきます。

◆長所を削って丸くする

「レーニングフェイズはめちゃくちゃ上手いけど、めちゃくちゃやらかす選手」がいるとしましょう。この選手にティーチングをすると「レーニングフェイズはそこそこ上手いけど、そんなにやらかさない選手」ができます。短所である、やらかす部分だけを治そうとすると、自然と長所であるアグレッシブさが無くなってしまいます。

一方この選手に対するコーチングの目標は「レーニングはめちゃくちゃ上手い、なんならものすんごい上手いけど、結構やらかす選手」にすることです。長所であるアグレッシブさをどんどん伸ばしていき、そのアグレッシブさをどう使うかを考えること、つまり「長所が何か」を自分で自覚させるのがコーチングの最初の1歩です。

◆指導者より上に行けない

LOLでティーチングしてしまうことで、1番のデメリットがこれです。スポーツでもなんでも、周りのレベルや環境というのは大きく変わっていきます。LOLならメタの変化も変わってくるでしょうし、技術のレベル上昇でマッチアップの有利不利が、真逆の評価になることもあります。

この変化に指導者側がついていくことはできるでしょうか?結論から言えば絶対についていけません。もしついていくことができるなら、そもそもそいつがプレイヤー側で頑張ればいいんですよ。コーチって言うのは基本的に「プレイヤーを諦めた人たち」がするものなんです。ただでさえ周りのレベルはどんどん上がっていくのに、諦めた人たちがついていけるわけがないですよね。

もしコーチが、現時点で教えている人たちより上手かったとしても「自分よりも上手くする」「今の環境で戦える」「未来の環境でも頑張れる」ために教えるべきなんです。しかも指導者とプレイヤーでは同じ人間ではありません。持って生まれたものが違うわけですから、それに寄り添った指導が必要なわけですよね。

何度も言いますが「相手に考えさせないで教える」というのは、ただ指導者側が楽をしているだけです(そういう意味では学校の授業と言うのは大人数を1人で教えるという意味では効率的ではありますよね。)。相手と一緒に考えてください。

◆指導者が消えると成長しない

一見、この画像だけ見るとティーチングの方がよく見えますよね?指導者が上達までの道を引いてあげて、だれでも「上手くなれた!」を実感できます。ですが、これ本当に上手くなっているのでしょうか?これは厳密には「上手くした(された)」だけですよね。

本当に「上達した」「上手くなった」というのは、この「登れるかわからない崖の登り方を覚えること」もしくは「自分自身の力で階段を作り上げること」ですよね?コーチのすることとは「この崖を登れ」と課題を出したり、逆に「登りたい壁があるんだけどどうしたらいいんだろうか」と自分で思考しても、どうしてもわからないところを一緒に考えてあげることだけです。

「これ教えればすぐ上手くなるやろなぁ」と教えるのは、ただ自分が気持ちよくなりたいだけです。指導者が「上手くした」という実感を得たいだけなんです。「これができれば上手くなるんやけど、どうしたら自分で気づくことができるやろなぁ」と考えるのがコーチです。

まとめ

・ティーチングをするのはコーチではない

・褒めるのが最大の仕事

・言語化するのが求められている能力

・対等に一緒に考えるくらいの姿勢を持つ

実際にLOLのコーチングをしてみて思うこと

僕は、コーチとして1つ美学を持っています。それは「僕がいなくなっても、教え子にはどんどん先に行けるような人になって欲しい」ということです。だからチームのコーチをしている時の、スクリムのフィードバックでも基本的には「自分がどう思ったか・したかったのか」を自分から話せるように教えてます。

他にも「この動画見とけよ」ということもしますが、それよりも「この動画見てよ!」という風に「自分で良い動画を見つけてくる」「自分で何かを発見する」ということに重きを置いています。言っちゃえば、僕なんかいなくても勝手に上手くなるようになれば、僕の教えは完璧だったと言えます。

はっきり言えば僕はプレイヤーとしても下手くそですし、コーチとしてもその辺の日本サーバーチャレンジャーなら教えれるだけで、僕よりも知識のある人は沢山いるでしょう。実際に「僕よりも知識があるな」と明確に感じた人は、LJL組以外でも僕が知っているだけで2人はいます。

ただ僕は後悔しています。知識やフィジカルがあるだけの人達が「コーチング」という技術を学ばないで教えて、その結果「ただ丸いだけの選手」が生まれてしまったのを、僕は見てしまいました。僕が1番期待していて、僕が2番目に好きな選手でした。

今、彼は練習生です。僕の期待を裏切って、LJLで大暴れしてくれたら僕は嬉しいです。ただ彼の目標はLPLでした。今のままだとLJLでなんとか食つなぐのがやっとで、LPLは夢を見ることすらできないでしょう。僕がもしあの時チームを離れないで、LPLまでの崖を用意してあげれたらどうなったんだろう?とは思っています。ですがあの時の僕は「自分よりも遥かに知識のあるコーチが教えてくれるんだからそっちの方がいいだろう」と思ってしまいました。まぁ僕がそのまま居座っても、何か変わったとは限りませんしね。

現在教えてる子たちは、出会ったのはプラチナでした。彼らには「LOLの技術」の崖ではなくて「プロはこれくらい頑張って当然」という崖を用意しました。というか投げつけてましたね。もっと言えば崖を登らせるんじゃなくて、飛び降りさせていたような気もします。

「プラチナでスタックしてるやつが命賭けなくてどうやってプロになるんだ?」っていうのを、合言葉に練習させました。めでたく1人プロになれる予定なので、崖を飛び降りさせればLJLの練習生くらいになら、なれるという証明はできました。あとはLJLの舞台で、現在の教え子たちと過去の教え子たちどちらが活躍するかでしょうか。

僕的には丸くなった子が活躍してもらっても構いません。むしろ僕が「ざまぁ!見たか!お前なんて必要なかったんだよ!」と言われるくらい活躍してほしいです。僕からすれば、皆可愛い教え子でしたからね。

その教え子の中の1人は、すでに活躍できずに引退しています。もしかしたら僕のことが嫌いかもしれませんが、僕は引退と聞いて少し寂しかったです。他にもプロになれるはずなんだよ!という子たちが、諦めて辞めていったりしているのを聞いて寂しい思いです。中にはコーチ志望の子もいるみたいなので、それはそれで楽しみです。

こんな長々と続いて申し訳ないですが、もしコーチ志望の人がいればこの記事を参考にしていただければ幸いです。

この記事の著者

syouko

syouko

学生時代はスポーツでプロを目指し、その後スポーツのコーチへ。
CIV4マルチという闇のゲームを4年したあとLOLにハマり、アマチュアチームの代表兼コーチとして1年半運営。
LOLを競技として捉えている人達を応援しています。

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