女性の活躍が目立ってきたeスポーツの現状と課題は?「ユニバーサルeスポーツ研究会」をレポート

「ユニバーサルeスポーツ研究会」イベント概要

青山学院大学総合研究所研究ユニットの五輪eスポーツは、9月5日(木)に「ユニバーサルeスポーツ研究会」を青山大学で開催した。五輪eスポーツは、eスポーツの探索的研究を行っているグループだ。そのため、今回のイベントに関しても特に何かの結論を出すというわけではない。

その目的は「研究接点化」「高等教育におけるカリキュラム・モデル開発」「聖地化の基礎整備」の3つである。これまでも3つの研究会とシンポジウムを開催している。

今回は「女性、シルバー、若者というフレームを超える可能性」「障害者、社会弱者というハンディを超える可能性」「ダイバーシティ&インクルージョンに対応する可能性」という3つをテーマに、eスポーツの第一線で活躍する関係者が登壇し、各セッションが行われた。

本稿では、その中からセッショAに行われた「新たに女性が活躍するステージとしてのeスポーツ」の模様を中心にレポートする。

本イベントのモデレーターを務めたのは、昭和女子大学 人間社会学部 現代教養学科 准教授/青山学院大学 総合研究所 客員研究員の丸山信人氏。

新たに女性が活躍するステージとしてのeスポーツ

本イベントで最初に行われたセッションのテーマは、「新たに女性が活躍するステージとしてのeスポーツ」だ。こちらでは、Wekids/Rush Gaming 代表取締役社長の西谷麗氏とアビームコンサルティング コンサルタントの田邊真以子氏、編集者・eスポーツ取材ライターの渡辺静氏が登壇。

チーム運営、イベント主催、オーディエンスという立場から、女性ならではの視点でeスポーツをどう感じ取っているかについて紹介が行われた。

写真左から、田邊真以子氏、西谷麗氏、渡辺静氏。

西谷氏が代表を務める「Rush Gaming」は、外部投資家を入れずに自らの投資で運営されているプロゲーミングチームだ。

他のプロゲーミングチームには多数の部門があるが、Rush Gamingのゲーム部門は『Call of Duty』の1部門のみで活動を行っている。ストリーマーが4名、選手が5名所属している。

事業内容は3つあり、1つは「メディア事業」だ。こちらは、所属するメンバー全員のYouTubeチャンネルとTwitter、インスタグラム、ブログなどのメディアをプロデュースし運営を行っている。2つ目は「プロモーション事業」だ。

こちらは、SNSマーケティングの企画から投稿、レポーティング、動画にバナー画像制作までをワンストップで提供している事業である。3つ目は、収益の半分を占めるという「EC&イベント事業」だ。

ファッションアイテムとしてのアパレルを製作・生産・輸入までをプロデュースしている。また、ファンイベントの実施やコミュニティの活性化活動にも注力していく予定である。

先ほどの「メディア事業」にも繋がるが、Rush Gamingの強みは所属メンバー全員がYouTubeやSNSを通して行われる発信力が強みである。

また、選手やチームの持つ「クール」「ストリート」「スマート」というイメージ戦略に加えて、ゼンハイザーや三井住友カード、DXRacerなどとのコラボ製品企画にイベント製作、生配信を実施するなど、企画力と実施力があるところも強みとなっている。

コアファンからライトファン、リーチとして可能性がある層まで、幅広いファンを取り込んできたRush Gaming。

アパレル・ECに関しては、1枚約8000円するチームユニフォームが、販売開始2週間で50枚を完売。人気のパーカーは2ヵ月で300枚を完売。今年の8月16日から22日にかけて、ラフォーレ原宿2Fのセレクトショップ『WHITE GALLERY produced by STORES.jp』でポップアップストアをオープンしている。

こちらは、普段アクセサリーやゴスロリファッションなどを扱っているような場所だが、毎日1時間以上は選手が店頭に立ち、ゲームが出来るスペースでポージングするなどファンサービスを実施していた。そうしたこともあってか、8月の月額売上350万円超えを記録している。

このポップアップストアは、西谷氏ともうひとりの女性スタッフのふたりで、女性目線で店舗の内容を考えていったという。ちなみにネットでは選手の写真集はあまり売れないそうだが、こちらのお店では売れ行きも良かったそうだ。

まだまだ女性が少ないeスポーツ業界だが、「ジャニーズやKPOPのファンなど、女の子のスタッフがいると、女性が好む世界がわかる。女性がいることで、男性だけで考えたものよりも企画の幅が出る」と西谷氏は語る。

2017年と2018年を比較したときに、女性のゲーマーや視聴者の数は増えてきている。Rush Gamingの場合も、男性は勝ったら「スゲー」負けたら「クソ」という感じで激しいが、女性は長く愛してくれるため経済価値が高いという。

とはいえ、まだまだ女性がゲームで戦っているのは世界的にもマイナーで、男のものというイメージが強いのもたしかである。そんななか、女性オンリーのeスポーツ大会として開催されているのが「GIRL GAMER」だ。

こちらは、Rush Gaming同様に数名だけの小さなチームで製作から運営が行われている。本職でマーケティングを行っているところが、NPO法人としてはじめたもので、ポルトガルやマカオなどでも実施されている。

日本でも地下アイドルがゲーマーになりましたというようなものを耳にすることがあるが、そうしたところと違う部分は、それぞれの選手自身が元々ゲーマーとしての才能がありながら、それを活かす場がないために作られたものであるというところだ。つまり、実力が伴ってこその、今の人気になっているというわけである。

LOL好きな高校生に出会ったことがきっかけでeスポーツの世界に

毎日新聞をキャリアアップのために退社したという田邊真以子氏。同氏が毎日新聞時代に起ち上げたイベントが「全国高校eスポーツ選手権」だ。

その第1回目のキービジュアルには、男子に交じって女性のメンバーも含まれた姿が描かれているが、これは主催者としての願望を入れたものだという。

この「全国高校eスポーツ選手権」は、毎日新聞社とサードウェーブ主催で行われたイベントで、日本国内に在住する高校生でかつ、同じ高校からチームを組んで参加できることが条件となっている。

もちろん、男女混合や女性のみのチーム、車いすや障害を持つ人でも参加することができる。本大会で採用されたタイトルは、3対3で戦う『ロケットリーグ』と5対5で戦う『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、LOL)だ。

「全国高校eスポーツ選手権」を起ち上げることになった理由は、従兄弟の高校生がたまたま『LOL』が好きだったことがきっかけだと語る田邊氏。その彼を見たときに、純粋に格好いいなとおもったそうだ。

それまでゲームに関するイメージは、どちらかというと勉強の邪魔になるものだと考えていた。しかし、彼を見てこれは応援したいと思い立ちEVO Japanのスタッフとしてボランティアとして参加。そこで声を掛けてくれた女の子3人のおかげ、続けることが出来たという。

その後、毎日新聞社の先輩ふたりと企画し、社内プロジェクトを起ち上げ。そのときにサードウェーブと出会い、高校生や大学生にヒアリングを行った後、2018年7月に大会を開催発表している。

田邊氏が高校生たちと話して感じたことは、ゲームとeスポーツは別物ということだ。これは音楽などのジャンルのひとつとしてeスポーツがあるような感じだ。大会に出場するために、廊下に張り紙をしたり先生たちと交渉したりと、様々な苦労をした高校生たちもいた。

それまでは、ただ楽しくてゲームを遊んでいるだけだったのが、大会に出たいという目標ができたことで、諦めずに頑張ることができたという。

毎日新聞社としても期待してこのイベントに取り組んでおり「沢山の人もらいたい。イベントに来てもらうことで、eスポーツって意外と悪くないかもと思ってもらえずはず」と田邊氏は語った。

eスポーツの観戦は野球やサッカーを見るのと同じ

2018年10月より、eスポーツメディア『SHIBUYA GAME』の一員として、多くの大会に出向き、選手に話を聞いて記事を作成してきたという渡辺静氏。自分は取材ライターという立場の前に、観戦勢(オーディエンス)だと語る。

野球やサッカーのファンは多いと思うが、基本的にはeスポーツもそうしたイベントを観戦するのと同じだ。そして、そこには女性が入ってくる可能性もあると渡辺氏はいう。eスポーツの大会を楽しんでいる層の多くは、自身もゲームをプレイすることが多い。

いわゆる「観戦勢」と言われる、自らゲームはしないものの大会を楽しんでいる人たちは圧倒的に少ない。ゲーム自体をプレイする女性の数は多いのだが、やはり観戦をする女性は日本ではまだまだ少ないという。これが海外では少し状況が異なる。

たとえば韓国の事例では、プロゲーマーはアイドル的な売り方がされている。そのため、eスポーツ大会の会場にも、まるでジャニーズのライブのようにグループで応援しにくるという女性も多いのである。

女性ファンだから、プロゲーマーがカッコイイという理由だけでファンになると思われがちだが、それだけではなく「喜怒哀楽」が大事だと渡辺氏はいう。試合で勝ったときに喜び、あるいはふがいないプレイに怒ったり悲しんだり。

そうした選手たちのプレイを通して伝わってくる喜怒哀楽に心打たれるのは、男女問わず共通した部分なのである。

女性が会場に行きやすい環境作りが大事

各登壇者からの紹介が終わった後、プレイヤー、オーナー、オーディエンスという3つの視点からみたディスカッションが行われた。女性がeスポーツに係わることに関して、西谷氏はオーナーの立場から女性は選手のメンターになると語る。

eスポーツの選手たちは、まだそれがキャリアになるとは意識していない。これまではゲームが好きで楽しくやってきたのが、ワンチャンあるかもといったステージだ。当然のことながら不安定でもある。

そのため、女性のマネージャーにココがカッコイイと褒めてもらうことで伸びることがある。これは、お母さんに褒められたときに育つのと同じだ。

公式大会が定期的に開催されているバトルロイヤルゲームの『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(PUBG)は比較的女性のファンが多い。

その理由について、西谷氏は「女性ライターが記事を書いており、そのほうが、女性ファンが付きやすい気がすると」と語った。

海外では女性プレイヤーは35パーセントを超えている。日本は全体的に女性が少ないが、モバイルプレイヤーでは70パーセントを超えている。今後、eスポーツがオリンピック種目となったときに、同じカテゴリーで男女が戦えるようになる時代がくるかもしれない。

ちなみに「全国高校eスポーツ選手権」では男女比は公表されていないが、女性は10パーセントほどしかいないと田邊氏はいう。これは、普通のパソコン部や文化部と同じ感じで、eスポーツ部として大会に出場しているというのも理由のひとつになっているのかもしれない。

eスポーツ観戦では、リアルとネットの違いもある。中国では圧倒的に女性が多いのだが、それはアリーナを持っているというのも影響していそうだ。

実際のところ、女の子がひとりでeスポーツ大会を自宅で見るのは手軽だが、会場に足を運ぶのはかなりハードルが高いと渡辺氏。当然のことながら、グループや友達同士で一緒に盛り上がった方が楽しく、ハードルが低いからだ。そうした面でも、まだまだリアルとネットには差があるという。

こうしたハードルの高さは、女性の数が大会会場で少ないのも理由だ。沢山の女性がいれば、行きやすくなる雰囲気が生まれてくる。そうしたことも踏まえて、西谷氏は女の子限定イベントを実施したいと語る。

しっかり選手もタレント化していくことが重要で、選手とハイタッチや握手ができるなど女の子が会場に来やすくなる空間作りなどをすれば、もっと訪れるようになるはずである。女性ファン自体は年々増えてきているため、ファンサービスのためにも「全チームチェキやってほしいですね」と西谷氏は語った。

最後に、このセッションに登壇者から締めのメッセージが語られた。

渡辺氏「以前取材でゲーマーの方から聞いたことですが、映画や音楽などが好きな人は絶対にeスポーツにハマれるということでした。映像があってストーリーがあり、主人公になることが出来るからだと聞き、感心しました。こうした体験ができるのは新しいことかなと思いました」

西谷氏「eスポーツは新しい体験になってきています。eスポーツ選手としての活動がストーリーになっています。リアルタイムで夢を追っている若者が見られて、インタラクションができます。これは野球選手とも違う体験価値です」

田邊氏「元々はコミュニティからスタートし、その中でゲームが好きな人たちがNO.1を決めようということで始まって作り上げたものなので、eスポーツはスポーツとは異なります。プロアマではなく、自分自身がプロとも戦って勝てば1位になれるので、垣根が低い。スポーツの一部になるとNO.1がいいというところにとらわれてしまうが、実際にはいろんな楽しみ方がある。それを考えると、新しい文化のひとつだと感じた。」

まとめ

“eスポーツ”というキーワードに絞ると、大会や選手、あるいは現場に携わっている女性の数はまだまだ少ないのかもしれない。

しかしながら、25年以上様々なゲーム関係の現場を見てきたが、少なくともファンのオフライン大会などではタイトルによっては女性の方が多いこともある。

現在のeスポーツタイトルが、ある程度ラインアップが決まっているところも理由のひとつといえそうだ。今後多くのタイトルで競技が行われるようになることで、年齢や老若男女問わずファンの裾野は広がっていくのではないだろうか。

 

記事提供:高島 修

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